はじめに
「都心マンションを買って貸し出せば、毎月家賃収入が入るから安心だよね」
「いやいや、家賃を払って借りた方が資金を寝かせずに済むよ」
不動産に関心がある人なら、一度はこんな会話を耳にしたことがあるはずです。
都心のマンションは価格が高く、家賃も高い。だからこそ「買うか、借りるか」「投資として成り立つのか」は気になるテーマです。
この記事では、「都心マンションの利回り(投資効率)」をやさしく解説し、実際に数字を使って「購入」vs「賃貸」を比較してみます。
1. そもそも「利回り」とは?
不動産でよく聞く「利回り」にはいくつか種類があります。
表面利回り(グロス利回り)
家賃収入 ÷ 物件価格。経費を考えない“見かけの数字”。広告でよく見るものです。実質利回り(ネット利回り)
家賃収入から、管理費・修繕積立金・税金・保険・空室リスクなどの経費を引いたうえで計算。実際の利益に近い数字。
たとえば「表面利回り4%」と書いてあっても、経費を引けば「実質2%」になることもよくあります。
つまり、表面利回りだけで判断すると失敗するのです。
2. 都心マンションの相場感
2025年現在、港区・渋谷区・中央区といった人気エリアの新しめのタワーマンションは、表面利回りで3〜4%台が一般的です。
一方、地方都市や築古物件では6〜8%といった数字も見られます。
ただし都心マンションは「資産価値の安定性」「売却しやすさ」という強みがあります。表面上の利回りは低めでも、長期的に持つと結果的に得をするケースも少なくありません。
3. シミュレーション① 投資用として「貸す」場合
仮に、1億5,000万円の都心マンションを買って、月50万円で貸すケースを考えてみます。
家賃収入:600万円/年
管理費・修繕積立金:84万円/年
管理会社への委託料(5%):30万円/年
空室リスク(1か月分空くと想定):50万円/年
固定資産税・都市計画税:約178万円/年
火災保険:約2万円/年
合計すると、経費は約344万円/年。
残る利益(実質の手残り)は 約256万円/年 です。
→ これを物件価格で割ると、実質利回りは約1.7%。
数字だけ見ると「低いな」と感じるかもしれません。
もし銀行から借り入れをして購入した場合(例えば1億500万円を金利1.8%・35年で借りる)、毎年の返済は約405万円。つまり、家賃収入だけでは返済しきれず、赤字になる計算です。
4. シミュレーション② 自分が「住む」場合
では、この部屋を「自分で住む」ケースを10年間で考えてみます。
購入する場合
頭金(自己資金):約5,500万円
借入:1億500万円(1.8%、35年ローン)
毎年の返済:404万円
管理費・修繕積立金:84万円/年
固定資産税:178万円/年
保険:2万円/年
10年間住んで、同じ価格で売却できたと仮定すると、10年間の住居コストは約5,875万円。
賃貸する場合
家賃:月50万円 → 年600万円
10年合計:6,000万円
比較すると、購入した方がわずかに安い結果になります。
5. 「購入」と「賃貸」、どちらが得か?
今回の仮定では、
購入の方が122万円ほどお得でした。
しかし、購入時に必要な自己資金5,500万円を投資に回せば、利息や運用益で差が逆転する可能性もあります。
逆に、マンション価格が上がれば購入が圧倒的に有利に。下がれば賃貸の方が正解だった、ということになります。
つまり、短期的には賃貸の方が気楽でリスクも少ない。
一方で、長期的に資産形成を狙うなら購入も有力。結局は「資産価値の将来性」をどう見るかがカギなのです。
6. プロが見る利回りのポイント
都心マンションは「数字の利回り」よりも「資産性(値下がりしにくさ・売りやすさ)」を重視すべき。
実質利回りが低くても、売却益や値上がり期待を含めればトータルでプラスになるケースがある。
「借りて住む」のは合理的だが、資産形成はできない。お金は減り続けるだけ。
「買って住む」のはリスクもあるが、将来売却できる資産を持てるのが大きな違い。
まとめ
都心マンションの利回りは、表面上は3〜4%程度で、経費を引けば1〜2%台に落ち着くことが多いです。数字だけ見れば「低い」と感じるかもしれません。
しかし、都心マンションは資産価値が下がりにくいという大きな強みがあります。10年、20年と持つ間に価格が上がったり、安定して賃貸需要が続けば、トータルで見れば十分なリターンになる可能性があります。
逆に、短期での運用や現金収入だけを求める投資には向きません。
「資産性を買うのか、キャッシュフローを重視するのか」――目的を明確にして判断することが大切です。



